2008/10/13

またもマッコリにて。

週の頭から「にっしゃん飲も〜」と
キイロい声で電話をかけてきていた粉子ならぬ麺子と
およそ1ヶ月ぶりの天下茶屋のしんみどう。

約束の時間より少し早めに到着したカウンターには、
…あれれ、トッパン時代のクライアントカップル。
仲睦まじく炒飯とソーメンみそ汁をつついている。
その男のほう、内装ドアの中でもパイン材やビーチ材の
無垢の商品開発を担当していた彼とは、
クライアントでありながら頭をペチペチと叩き合う仲であった。
常にタイトな日程の中、
出張校正で海老江のトッパンにやってきては
近所の中華屋でアテをつつきつつ、
内装部材の辞書的なカタログには不要の
部材の調理方法などの情報を語って聞かせられたことも。
(もうその知識もカタ〜い引き出しの奥にしまわれて出てきませんけど)
とにかく、クライアントとのそういうやり取りは充分に刺激的だった。
その会社が業界でどの位置にいるだとか
「私はカタログを作る身分である」だとかってこととは別で。
懐かしさの余りについつい話し込み、
ココロはいつでも仕事をいただきたい所存であることを
「でへへ〜」とチョーシに乗ってほのめかしたりしながら、
麺子が来るまでにすでにビールを3杯飲み干した。

豚キムチと同時に麺子登場、
さらにじゃがいもチヂミともやし炒めを頼み、
突き出しのキムチをつつきながら杯を進める。
(松っちゃんのように豚足マスト、ではない)
麺子からの人生相談が佳境に差し掛かったところで
大先輩の曽束夫婦が偶然登場、ひとまず人生相談はおいて
(というかこの時点で酔っ払いすぎ、
夫妻の登場はうまい逃げ口になったのだった)
前の日まで行っていたという東京のトンカツ事情で軽くジャブ、
先日出た『西の旅』のうどんの記事に対する高松の返答に、
どこのだったか忘れた店のおもしろ話に、
高松で最近ひいきにしている居酒屋のカウンター話にと、
データ化しようもない街の噂話の応酬。
夫人と麺子に挟まれ、
「ライターのくせにデータに弱すぎる」と攻撃を受け、
「でへへ〜」とごまかしながらくいくいっとグラスを傾けたのでした。

…とまあ、金曜日はこんな案配。
こんな調子ではゴキゲンにマッコリが進みすぎ、
最後はメーワクにもアテなしにてマッコリ1パック半を飲み干した。
そのままひとりでミナミに繰り出そうとタクシーを走らせるも、
途中、ひどい眠気の波が打ち寄せたためにUターンして帰宅と。
時間の停まっていたいくつもの古巣が現在進行形になる瞬間、
酔っ払いながらも妙に爽やかな満足を得たのであった。

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目を覚まして庭を見ると雪であった。
雪は寝床にいるときから気配で分かる。
何かがしんしんと世界に積もっていく密やかな堆積感を、
体のどこかが感じている。
窓を開けると別世界が燦然と現れる。
なんという光景をこの世は持っているのだろう。
水蒸気が空気中のちりを核にして雪の結晶となる。
そしてそれは目覚ましく白い。
そういうものがおびただしく降り注いで世界を覆い尽くしている。

近年、建築や年、人や言葉は、どこか半透明になってきた。
言わば半物質的な存在感とでも言おうか。
建築はガラスや新素材で存在感が軽くなり、
インターネット上を飛び交う言葉は、立ちも座りもせず浮遊している。
それは知らぬ間に更新されているか、
あるいは古色もつかないまっさらの様相で何年も存在し続ける。
そんな状況に新鮮さや可能性を感じて、
それをさらに拡張しようと僕らは日々努力を続けている。
おそらくこの半透明の世界は今後も増殖を続けるだろう。
やがて僕らの意識の大半は、そこに住まうことになるのかもしれない。

しかし、こうして雪に遭遇する。
それは手の平に静かに舞い降り、溶けて光の露となる。
僕らは、消すことも、更新することも、
半透明にすることもできないこの身体を通して、白の摂理に感じ入るのだ。

雪は当分やむ気配がない。

※『白』著:原研哉/中央公論新社

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酔っ払いの末に麺子の悩みはすっかりおざなりになってしまった。
ほったらかしにするワケにもいかず、
次の日の朝、聞いて思ったことをメールにしたためて返した。
要約したところ結局は、かわいい麺子ゆえ協力者は多し、
最優先事項だけ決めれば流れのままになりまっせーと。
それって“半透明”じゃないからっすよね。

ちなみにしんみどう、この連休のうちに改装を決定。
原節子曰く「テレビのおかげやな〜」と。

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