夜中、へんなメールが届いた。
「バッジ渡すの明日やんね? ×時×分、○○○前でいける?」
寝ぼけながらそのメールを眺めてしばらく悩み、
身に覚えがないと決め込んで、また眠った。
起きて、不穏に思って返信を出す。
やんわりと「私じゃない誰かに送らなければいけなかったのでは」
という空気を醸してみる。
彼からの返事にはそのバッジを撮った写真がついてきていて、
「サトチン、忘れてしまったの? あのときあんなにほしいって言ったのに」
「それに、その日じゃないとダメだって言ってたのに」
という悲しげなもんだったので、私は記憶の旅へと出たのだった。
酔っ払っていても、たいがいのことは覚えているつもりだった。
この一年近く、彼とは会っていないし、連絡もとってないし、
はたまたこのバッジも見たことがない。
さらに彼から「サトチン」と呼ばれたことはないはずだ。
あれれ。あれれ。あれれ。
別の可能性を考えてみる。
思っている「彼」ではないのかもしれない。
それじゃ一体キミは誰なのかい。
年末年始感を醸しつつ、やんわりと、
「こないだって、いつ会ったっけ?」と送ってみる。
すぐに「会ってないよ。メールをやりとりしたやん」と返信。
履歴を辿る。
そんなメールはない。
でも、彼は嘘を言う人ではなく、
むしろバカ正直者であることはなんとなくわかっている。
これ以上この問答をすると傷つくのではという恐れもある。
酔っ払って忘れてしまったのかもと言い訳絡みで断ろうとすると
「正月だから仕方ないよ」と慰め込みの返事がきた。
さらに謎は深まるが、う〜んう〜ん、と悩んで、悩んだ末に、
喜んで(いるふりをして)バッジを引き取ることにした。
そのバッジを喜びそうなみっちゃんの店は来月周年なので、
ついでにプレゼントにしようと思ったのだった。
はて。
その、みっちゃんの店で、そのバッジ、見なかったっけ?
むーん。ま、しゃーない。
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