高松にオフィスができた。
「オフィス」と呼ぶにはいささか図々しいか。
オペレーターが多数詰めている会社の一角を空けてもらってそこにいる。
入口すぐの個室。
10畳くらいのスペースには、
ワタシ専用(と、この際言ってしまおう)のコピー機も完備。
机はアホみたいに広く、机の前には空の本棚。
エアコンをそこそこにかけて
原稿を広げてあれやこれやと考えながら作業をしている。
飽きたらのんびり本を読む。
今は気分に合わせて3冊掛け持ち。
「難しすぎてわからんわー」と言いながら読むのがおもしろく、
ときに突っ伏して眠っている。
て、あれれ。
ほとんど毎日、誰かが遊び(?)にやってくる。
親分はほぼ1日に2回、進捗状況を伺いに来ているつもりだろうが、
たいがいはワタシが取ってきたパンフレットやらを眺めて
仕事とは別の情報を交換して帰っていく。
こないだは「差し入れ〜」と言って本を2冊くれた。
イスにゆっくり腰掛けて世間話をして帰っていく高松の営業マンや、
カンプ上がりを待ちながらお茶を飲んでいくディレクター、
ここは学校で言うところの保健室みたいなもんだ。
こないだまでのケツに着火している日々は終わり、
誰も来なければマイペースに緩やかな時間を過ごしている。
やんわりな刺激とそれを処理するだけのゆったりした時間、
こういう日々がワタシにはちょうどいい。
今やってる仕事が終わるまでの期間限定だけど、
かなり居心地がいいので、
高松の仕事はこれからもそこでやろうかとこっそり企んでいる。
いしし。
「西村さん、いつまでおるの?」って言われるね、ええもちろん。
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Fハカセは考えた。
赤い薔薇を、ツユクサのような鮮やかな青に変身させたい。
そのためには、ツユクサにあって、薔薇に存在しない
色素合成酵素の遺伝子を、薔薇に導入してやる必要がある。
しかし、主役となる酵素一つだけでは薔薇は青くならない。
その酵素を助ける別の酵素群もツユクサから移植してくる必要がある。
一方、赤い薔薇には薔薇を赤くするための
色素合成メカニズムが本来的にそろっている。
そこへ青い色素を作るメカニズムを移植すると、
当然のことながら競合や干渉が生じる。
したがって、薔薇の酵素でじゃまになるものについては、
これを除去する必要がある。
また、せっかく合成された青い色素が
安定して存在する細胞内環境を整えないと、
薔薇は青さを保てない。
そのために色素を安定化する仕組みもツユクサから持ってくる必要がある。
ハカセは根気よくこの作業を一歩一歩進めていった。
薔薇を青くするための遺伝子を移植しつつ、
薔薇にあって不必要な遺伝子を除去する。
何年か後、とうとうFハカセは可憐な薔薇を咲かせることに成功した。
花は鮮やかな青色に輝いていた。
ハカセは気がつかなかったが、
その花はどこから見てもツユクサそのものだった。
『動的平衡』(福岡伸一著/木楽舎)
「青い薔薇」ーーはしがきにかえてより
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流れ着いた岸辺にて、お昼に蕎麦を食べながら
メモ帳に思わずシコシコと写したのがこれ。
流浪の身でもクセは変わらず。
遺伝子操作もされてないし。
そういえば、親分から仕事をもらい始めて早くも1年。
ホテル暮らしにもいよいよ慣れて、
週末などで旅立つときには作業場に常備品を置いていく。
常備品の中身は、
・エマール(手洗いしても手にやさしそうだから)
・リセッシュ(毎回クリーニングはちとキツイ)
・物干しのセット
・ティーバッグ&コーヒーバッグ(ていうのか?)
・あさげ&コーンスープの類(淡路島で買ったオニオンスープ旨し)
・醤油(ホテルでの手料理=つまり豆腐が限界、につける)
・マヨネーズ&ドレッシング(ホテルでの手料理=サラダが限界、につける)
・紙の皿&紙コップ&携帯箸&スプーン
・コンタクトレンズ洗浄セット(家にもあるので)
・爪切りとか毛抜きとかの類
・生理用品
・読んでしまった本&読まれ待ちの本(内数冊は親分にあげた)
・見つける度に取ってしまうパンフレットやカタログやフリーペーパー
・ノートパソコン(家にはもっと仕事のできる娘がおる)
とまぁまぁ所帯染みたラインアップ。
これを段ボールに詰めて、えっちらおっちら担いで運ぶ。
高松の仕事がなくなったら…の心配で浮かぶのが、
「これから生活できるのか」よりも
「この荷物を家に持って帰るのか」のとこに苦笑する。
(もちろん宅急便で送るけど)
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